ひつじの国からメェるはバァ

トルコ☆ローカル☆見聞録

トルコ語の「こんにちは」?

言葉の基本、挨拶の最初に言う「こんにちは」という言葉。

外国語を勉強する時も、まず「こんにちは」という言葉から始まります。

 

トルコ語の「こんにちは」には、いくつかのバリエーションがあります。

一番メジャーなのが「Merhaba メルハバ」。

その他に、「selâmaleyküm セラームアレイキュム」や前後が入れ替わった形の「 Aleykümselâm アレイキュムセラーム」があります。

「セラームアレイキュム」への返しが「アレイキュムセラーム」です。

軽い挨拶だと「セラームselam」だけになります。

 

 

これらの語源について、

「メルハバ」は、アラビア語で「ようこそ」という意味の「マルハバン مرحبا」から。

「セラームアレイキュム」/「アレイキュムセラーム」は、アラビア語で「あなたに平安あれ」という意味のイスラーム教の挨拶「アッサラーム・アライクム السلام علیکم」/「(وワ)アライクム・サラーム  علیکم السلام」から来ています。 (「ワ」は英語の"and"を意味します)

 

こうして見ると、トルコ語の「こんにちは」にあたる言葉は、どれもアラビア語から

来たことが分かります。

中には「セラームアレイキュム」のようにイスラーム教に関係するものもあります。

トルコ人のほとんどはイスラーム教徒で、加えて昔からイランやアラブ文化の影響を受けていたので、自然とペルシャ語アラビア語の語彙をトルコ語の中に取り入れてきました。

日本語の中に漢語由来の言葉がたくさんあるのと同じですね。

 

ですが、挨拶の基本中の基本である「こんにちは」が外来語であるというのは、どういうことでしょうか。

例えるならば、日本人が日本語の発音で「ニーハオ」と言っているようなものです。

外来語のアラビア語が入ってくる前、トルコ人は一体「こんにちは」を何と言っていたのでしょうか。

 

アラビア語由来の「こんにちは」の後に言われるのが、朝・昼・夕・夜の挨拶の言葉。

英語で言うGood morning、Good afternoon、Good evening、Goog nightです。

トルコ語では、朝:  Günaydın ギュナイドゥン

                    昼:  İyi günler イイ・ギュンレル

       夕~夜:İyi akşamlar イイ・アクシャムラル

       夜更け:İyi geceler イイ・ゲジェレル

 

こちらはどれも元からトルコ語の言葉です。

もしかしたら、アラビア語の挨拶表現が入って来る前は、これらが「こんにちは」として挨拶の最初に言われていたかもしれませんね。

 

ところが、このうち朝の言葉以外は、基本的に挨拶の最後、別れる時に「またね」という意味合いで言うもので、会った時に声を掛ける言葉ではないのです。

そうなると、朝以外の時間帯ではどうしていたのでしょう。

 

さらに、朝以外の言葉は「良い」という意味の「İyiイイ」+時間帯(昼・夕~夜・夜更け)というパターンなのに対し、

朝の言葉だけ、「日 gün ギュン」+「輝く aydın アイドゥン」という形で、意味もパターンも異なっています。

もしかすると、トルコ語では日が出てから朝の時間が一番大切で、それから後は時間帯に応じて単に等分されるだけという考えなのでしょうか。

 

ちなみに、日本語の場合、起床と就寝があって、その間で日が出ている時(=日中)と陽が沈んでいる時(夜)に分けられていますね。

朝: おはよう

昼間:こんにちは

夜: こんばんは

夜遅く・寝る時:おやすみ

 

また、英語では、昼間/夜という区別ではなく、「正午」という時間軸が重要になっているように思えます。

例)Good afternoon.

 

こうして考えると、朝~夜の挨拶の言葉には、古来その集団が持っていた時間感覚が現れているとでも言えましょうか。

そしてその上にかぶさったアラブ・イスラームの言葉。

 

「こんにちは」という言葉から、トルコ人の頭の中にある世界がちらっと見えました。