トルコの邪視祓い
トルコお土産屋さんに行くとほぼ必ず目にするものが、「ナザレ・ボンジュウ」というものです。青くて円く平べったいガラス玉の真ん中に黒い点が付いていて、その周りが黄色で縁取られています。色はともかく、目玉を彷彿とさせます。
「ナザレ」は「邪視」という意味です。トルコでは、目、とくにじっと見つめる視線には大きな力があって、特に美しさや豊かさなどに対する人の”妬み”の感情が加わった時にものすごい破壊力を発揮するのだそうです。そのような目で見つめられるとその身に大きな災いが降りかかるとか。
実際、災いまでいかなくとも、外に出て外国人だからとじろじろ見られると、ものすごくエネルギーを吸い取られた気分になります。そのくらい目線というもの自体には大きな力があると思います。
トルコの人たちは、そのような邪視を避けて災いが降りかからないようにおまじないとして、「ナザレ・ボンジュウ」をあちこちに飾るのです。
まさに「目には目を」という考えで、邪視を「ナザレ・ボンジュウ」の目ではね返すという意味が込められています。
ナザレ・ボンジュウの仲で一番オーソドックスなのは、始めに紹介した青いガラス玉に黒い点と黄色の縁取りを描いたもので、ひもがついていて壁に掛けることができます。
また、魚の形をした焼き物の目玉部分に「ナザレ・ボンジュウ」がはめ込まれていたり、造花のような木や植物の模型に、花が咲いたという体で花弁の内側に「ナザレ・ボンジュウ」」を埋め込んだものもあります。人々はそれらを家や車の中に飾ります。
また「ナザレ・ボンジュウ」をイヤリングやブレスレットにして、身に付けられるようにしたものもあります。お土産屋さんで安く売られているので(地方だと100円くらい)、見つけたらぜひ買ってみてください。
また、「ナザレ(邪視)」が来ないようにするおまじないもあります。自分や相手に良いことがあった時や良いことを褒める時に、例えば友人に「髪が伸びてきれいだね」と言った時に、テーブルをげんこつでトントンと軽く叩きます。これは、良いことに対して邪視が来ないようにお祓いのような意味があるそうです。また、悪いことについて話す時も、やはりトントンと音を出して邪視除けをします。
トルコと文化が近いアゼルバイジャンでも同じことをするそうですよ。
また、トルコ系民族のカザフ人が多く住む中央アジアの国カザフスタンでも、「ナザレ(邪視)」が信じられているようです。カザフスタンでも、邪視除けとしてトルコと同じように机などを拳で軽く叩くそうです。
一つ不思議なのは、「ナザレ(邪視)」に対して音を出すことがどうして邪視除けになるのでしょうか。ナザレ・ボンジュウのように目線に対して「目」で対抗するならまだしも・・・
大きな音を出すことが魔除けになるという話も聞くので、「ナザレ(邪視)」も具体的な目線に限らず邪気全般を指すものか・・・はっきりとしません。
昔、山登りをした時に、「クマは基本人間を怖がるから、山行中はとにかく音を出すように」と言われ、鈴やラジオをリュックに付け、大声で世間話をしたり歌ったりしながら歩きましたが、まさにクマ除けみたいなものですね。